無垢材オイル仕上げの家具について
もっと詳しく編
無垢材オイル仕上げの家具について
もっと詳しく編
京都炭山朝倉木工のオイルフィニッシュ仕上げの無垢の木の家具は、
オイルを塗る前の「木地の仕上」の段階で、刃物ですべすべにしてからオイルを染みこませています。
「木地の仕上」(木の表面をツルツルにする方法)には大きく2つの方法があります。
ひとつは、ペーパーという石の粒がついたもので削る方法。
ペーパーの石の粒をだんだん小さい粒にしていくことで、
木の表面の凸凹も小さい物になっていきます。
大根でたとえると、最初は鬼おろし(おおきな凸凹)でおろして、
次に細かい目のおろし金でおろして、、、というときの大根の削った面のイメージして下さい。
もう一つは、刃物で削ってスパッと木の表面をツルツルにする方法。
この場合、刃物のほうを、最初は粗い砥石、次第に細かい砥石、最後は天然の細かい泥が堆積してできた
なめらかな砥石でギザギザをなるべく小さくして、それを使って木をスパッと削ります。
この方法は、大根をピーラー(皮むき器)でむいた表面をイメージしてください。
鉋(かんな)仕上げとペーパー仕上げ、方法が違うだけで目指すのは、
「木地のざらざらをすべすべにすること」
刃物仕上げが良くてペーパー仕上が悪いわけではありません。
朝倉木工も刃物が使いにくい場所の仕上げにペーパーも使います。
ペーパーでもすべすべにしてからオイルを染みこませています。
問題になるのは、まだまだ表面が粗い段階なのに、塗装をしてしまうこと。
「オイルフィニッシュはシミが付きやすい」という表現には少し誤解があります。
「オイル仕上げ・オイルフィニッシュ」という塗装方法が悪いのではなく、
オイルを塗る前の工程「木地の仕上」(塗装する前の木の表面をどれくらいツルツルにしているか)によって、シミになる、ならないが変わるのです。
表面が細かく仕上がっていて、適切な段階でオイルメンテナンスをしたものは、
驚くほどシミに強い表面になります。
朝倉木工では、10年以上使用したテーブルの上に底に水の付いたコップを置いてみることができます。
朝倉木工では鉋で天板を仕上げていますが、
ペーパー仕上げが悪いわけではないのです。
ペーパー仕上げの天板の場合、ペーパーで広い平面をツルツルにするというのは、意外に難しいのです。
木の年輪にも出来た季節によって硬い部分柔らかい部分があり、
ペーパー仕上の場合柔らかい部分が先に凹んでしまいがちなので
均質に番手を細かくしていくのが難しいのです。大きなペーパーの時の粒子のギザギザを
次の中くらいのペーパーの粒子のギザギザいにそろえて、更に小さな粒子にそろえて、、、
ひとつ前の大きな粒子の筋がなかなか消えないという事が起こります。
広い平面でツルツルに見えるまでをペーパーだけで仕上げるというのは、機械を使ってもかなり手間がかかる事です。
一般的な木製品でウレタン塗装が多い理由は、ある程度ペーパーをかけた木材の表面なら、
更に細かくツルツルにしなくても塗装の膜でツルツルに出来るからです。
(ウレタン塗装にも水汚れに強い、などのメリットがあり、木地をツルツルにしてウレタン塗装を施すのであれば、長く使ってウレタン塗装の膜が剥がれてきても、現れてくる木地表面はツルツルなので、汚れや菌が付着しにくい。
粗い木地仕上の上からウレタン塗装されている安い木製品が、使っていくうちに塗装の膜がとれた部分だけ粗い木地が現れて汚れやすくなるため、「木のものは使っていると汚くなる」と間違った認識が増えています。
塗装の前の木地の仕上の違いと、塗装の違いが混同されているのが現状です。)
ウレタン塗装なら終われる段階でオイルフィニッシュのオイルを塗っても、ちっともツルツルすべすべになりません。もう一段階、2段階、粒子を細かくする必要があります。
木製品を安価に大量生産したいという場合には、オイルフィニッシュは選択されません。
「オイルを塗って手触り良い状態までにする」には、手間賃がかかりすぎてしまうのです。
そのため朝倉木工では、仕上げる手間をかけて作っても購入価格が高くなり過ぎないように、
基本は工房で作って、来客時には作り手が応対して直接ご注文いただく。という選択をしています。
(そのなかで、存在を知っていただくため時々百貨店やイベントに出展しています。)
塗層の膜があるタイプの塗装(ラッカー塗装、ウレタン塗装、漆など)は、メンテナンスしたいときに塗膜の上に塗膜を重ねられるもの(漆などは重ねていきます)と、そうでないもの(現状の塗膜の上にはくっつかないため剥がして再塗装が必要なもの)があります。
木の家具を選ぶときは再塗装を受け付けているか、等、製品開発の段階で、長く使うことを想定されている木のものを選ぶことをお勧めします。
木のテーブルの輪染みの種類
一般的に「輪ジミ」といっても種類が在り、原因と対策が異なります。
症例①
塗装の膜がある塗装の場合の、熱や薬品などによって塗装の膜が反応して白く変色してしまう状態。
(これは朝倉木工のオイルフィニッシュでは起こりません。ご使用の家具がオイルフィニッシュという名称でもワックス成分が強い場合や、オイルウレタン使用の場合、塗膜があるのと同じ状態のときには起こり得ます。)
西洋ではテーブルクロスを使用する文化であったため、アンティーク家具などをお使いの場合は、熱いものを入れた熱伝導率の高い器は直接置かないよう気をつけましょう。
症例②
オイルフィニッシュで起こりうる輪シミは、何年もの使用でオイル成分が表面に少なくなってきた時期に、油の瓶などを置いたらそこだけ油分を木が吸収し、他と違いが出た状態。
これは、オイルメンテナンスで他の部分にもオイルを補給することで目立たなくすることができます。
症例③
木の中に浸透したオイルが完全に硬化する前に使用してしまい、水分と木の中の半乾きのオイルが反応し他と違いが出た場合。
(これは朝倉木工のできたての時や、メンテナンスしてすぐのときには可能性があります。オイル塗りたてから数日間だけは、水分を直に置かないようお願いします。)
症例④
鉄器を直接置いた場合、木のなかのタンニン成分と鉄分が反応し黒くなることがあります。(錆が出る包丁の先端なども同様)黒くなってすぐにレモン汁(市販の果汁可)を付けておくと、薄くすることができます。
応用編:
安価な木製スプーンなどは、塗装の膜がはがれて木地のざらざらの仕上げ面が露出してくるとその凹凸が汚れやすくなります。
そうなったら、120か180番の粗いペーパーで全部塗装の部分をはがしてしまって、240番で滑らかになるまで木地を磨き、
乾性油系のオイル(クルミ油、亜麻仁油など。添加物の入っていないオイルは上手に乾かすのが難しいので、初心者の場合はリボスオイル、オスモオイルなどをお勧めします)(オリーブオイルは、不乾性油といってずっと固まらないオイルなので、毎日よく使う炒めベラなどならむっても問題ありませんが、たまにつかうだけの木のお皿などに乾かない系のオイルを塗るのはお勧めしません)を塗って、乾かしてから耐水ペーパー400番、800番で磨いてもう一度オイルを塗って乾かすと、なめらかに生まれ変わります。
ペーパーではなく、彫刻刀などで削るのも楽しいです。
(刃物の先に手は置かないですむように、板にあて材をビスもみし、そこに押し当てて削ると、手が安全です。小さいものの木工作業は意外と危ないので、工夫して作業してください。)
木の事、木の性質、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
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DatePublished:2023/12/12
DateModified:2024/6/14更新
Author: Reina Asakura家具製作一級手加工技能士
Publisher: 京都炭山朝倉木工
Kyoto Sumiyama Asakura Mokkou
Quality Furniture Design & Woodworks